2025年10月4日、自民党総裁選に勝利して拍手を受ける高市早苗氏(東京) 。高市早苗氏が自民党総裁・内閣総理大臣に就任したことで、日本の政治は大きな転換点を迎えています。日本初の女性首相誕生という歴史的出来事であると同時に、高市氏の政治スタンスはこれまでの路線と一線を画すものですtheguardian.com。以下では、高市政権の持続性、経済・安全保障政策の方向性、対中・対米関係、次期国政選挙への影響、メディア対応の変化、さらにはネット保守・アンチリベラル潮流の中での位置付けと欧米の右派政権との比較について、各論点を詳しく整理します。
政権基盤と持続性:党内基盤・支持率・対立構造
高市政権の持続期間を左右する最大の要因は、その脆弱な政権基盤です。高市氏は自民党総裁選で小泉進次郎氏ら男性候補を破り勝利しましたがtheguardian.com、党勢は必ずしも盤石ではありません。石破茂前総裁(前首相)下で2024年以降に行われた国政選挙で自民党は衆参両院の過半数を失う敗北を喫しtheguardian.com、与党は現在衆参とも単独過半数に届かない状況ですreuters.com。そのため高市氏が首班指名を受けるには、他党(野党)からの協力票が必要となりましたtheguardian.com。一部野党の協力もあり首相就任は「ほぼ確実」と見られましたがtheguardian.com、これは政権運営上の不安定さを如実に示しています。
高市氏の党内基盤も特殊です。同氏は安倍晋三元首相の路線を継ぐ党右派の代表格ですが、足元の自民党支持層での支持率は必ずしも高くありませんjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。世論調査では、自民支持層で高市氏を支持する割合が他候補より低調で、小泉進次郎氏の方が支持率トップという結果もありましたjmrlsi.co.jp。一方でネット上や保守系論壇では熱烈な支持を集めており、このギャップが指摘されていますjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。専門家の分析によれば、高市氏を熱心に支持してきたコアな保守層の一部が現政権(石破政権)の政策に失望し、自民党から他の新興政党(参政党など)や無党派層に離脱していることが背景にありますjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。実際、2024年から25年にかけ自民党支持率は約33%から21%へ急落し、安倍政権期の支持率(約40%)と比べると半減していますjmrlsi.co.jp。これは自民党保守支持層の離反を意味し、その一部は他党に流れても依然として個人として高市氏を支持し続けるという現象が起きていますjmrlsi.co.jp。要するに「高市ファン」の一部が党外に滲み出ており、高市氏本人への支持熱は高いものの、それが党内支持率には直結しない構造となっているのですjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。
以上の状況から、高市政権の寿命は次期衆院選までの短命政権に終わる可能性も指摘されます。衆議院は任期満了が近づいており(2025年内に選挙予定)、高市氏としては早期の衆院解散・選挙で支持基盤を立て直し、安定多数を確保したい考えでしょう。しかし現状では、自民党支持層の縮小と党内の路線対立(穏健派との溝)を抱えており、解散はリスクでもあります。仮に選挙で敗北すれば政権は一年足らずで幕を閉じる可能性もあります。一方、選挙で保守層を呼び戻し一定の勝利を収められれば、政権は数年程度(次の総裁任期)持続しうるでしょう。高市氏自身も「喜びより、これからが正念場だ」と述べ、困難な政権運営への覚悟を示していますreuters.com。党内からは早くも「茨の道」の声が上がっており、初の女性首相という追い風以上に、党勢立て直しと国民の信頼回復という重い課題が重石となっています。
経済政策の方向性:積極財政か緊縮か
積極財政・経済成長の追求 – 高市政権の経済政策は、安倍政権の流れを汲む積極財政路線になると予想されます。高市氏自身「世界の潮流は行き過ぎた緊縮財政ではなく、責任ある積極財政だ」と述べており、大胆な危機管理投資と成長投資で「強い経済」を実現すると表明していますbloomberg.co.jp。9月19日の総裁選立候補会見でも、「責任ある積極財政」による経済再生を掲げ、暮らしの安心と力強い経済成長の両立を目指す決意を示しましたbloomberg.co.jp。この路線は、デフレ脱却と経済再興のため財政出動を惜しまなかった安倍晋三元首相の「アベノミクス」を継承・発展させるものと位置付けられますreuters.com。
減税と給付:家計支援策の具体策 – 高市氏の掲げる主要経済政策には、減税と現金給付を組み合わせた中低所得者支援が含まれますbloomberg.co.jp。具体的には、所得税減税(所得控除の拡充など)や給付付き税額控除(低所得者に対するネガティブ・インカムタックス的措置)の制度設計に着手し、可処分所得を底上げする考えですbloomberg.co.jp。さらにガソリン税の暫定税率廃止を早急に実施すること、給与所得の「年収の壁」を引き上げて手取り収入を増やすことも公約に明記しましたbloomberg.co.jp。高市氏は総裁選の演説で「日本を再び世界のトップに押し上げたい。その鍵は経済の力だ。経済成長を可能な限り追求する」と宣言しておりtaipeitimes.com、減税や財政支出によって成長を加速させる強い意欲を示しています。
こうした方針は直接的な家計支援として国民生活の負担軽減を図るもので、岸田前政権下で問題化した物価高・コストプッシュインフレへの対策ともなります。事実、高市氏は最近のインフレについて「主に輸入コスト高が原因」と分析し、家計支援や生産性向上投資で「賃金上昇が牽引する緩やかなインフレ」に転換したいとの考えを示しましたreuters.com。総裁選期間中、日銀が利上げを模索する中でも高市氏は「金利急騰は企業の投資余力や住宅ローンに影響し、好ましくない」と指摘し、金融引き締めへの慎重姿勢を崩していませんreuters.com。昨年には日銀の利上げを「愚かだ」と批判したこともあり、市場には「積極財政・金融緩和派」との見方が浸透していますreuters.com。もっとも総裁選では波風を立てぬよう「金融政策の具体的手段は日銀に委ねる」と発言をトーンダウンさせましたreuters.com。
債務・市場の懸念と現実性 – 大胆な財政出動路線に対しては、債務残高拡大や市場の信認を懸念する声もあります。日本の政府債務はGDP比で世界最悪水準に達しており、投資家の間では高市氏の「財政ハト派」的な勝利に警戒感も生まれていますreuters.com。実際、財政規律軽視への不安から国債利回り上昇や円安など市場変動も予想され、「高市政権の誕生は世界有数の債務国である日本にショックを与えるかもしれない」との分析もありますreuters.com。他方、高市氏は自身の財政政策を「あくまで責任ある範囲での積極財政」だと強調し、無秩序なバラマキではなく成長に資する投資に重点を置く姿勢ですbloomberg.co.jp。現に、公約には消費税減税(特に食料品の税率0%化)など即効性に欠ける策は盛り込まず、効果の高い給付付き税額控除などに絞り込んでいますbloomberg.co.jpbloomberg.co.jp。高市氏は「今の物価高対策として消費減税はレジ対応の問題もあり即効性がない」と説明し、現金給付策も参院選で支持が得られなかったと冷静に振り返っていますbloomberg.co.jp。このことから、同政権の経済政策は大盤振る舞い一辺倒ではなく現実的な範囲での財政拡大を目指すとみられます。
産業育成・経済安全保障 – 高市政権の特徴として、単なる景気対策に留まらず経済安全保障と産業競争力強化にも注力する点が挙げられます。元経済安全保障担当相でもある高市氏は、海外からの投資を厳格審査する「対日外国投資委員会」の創設や、外国人の土地取得規制の見直し、不法滞在者対策の強化などを打ち出しましたbloomberg.co.jp。これは中国企業などによる安全保障上重要な土地・企業買収を警戒するもので、国家安全と経済の両立を図る動きです。また「スパイ防止法」の制定にも言及しておりbloomberg.co.jp、先端技術漏洩の防止やインテリジェンス強化を目指すとみられます。産業政策面では、防衛関連や半導体・AIなど戦略分野への投資を政府が後押しし、「経済力こそ国力」との観点から産業育成型の財政支出を拡大するでしょう。高市氏自身「経済の強さこそが日本を再び世界のトップに押し上げる鍵」と述べておりtaipeitimes.com、大胆な成長戦略で「失われた○○年」からの脱却を図る意気込みです。
まとめると、高市政権の経済政策は「積極財政による国力回復路線」です。家計減税・給付による消費底上げと同時に、成長投資で供給力強化を狙う二正面作戦と言えますbloomberg.co.jpbloomberg.co.jp。ただし財政の持続可能性や政策効果には注視が必要で、短期的な人気取り策に終始せず持続的成長の道筋を示せるかが問われます。市場や世論は当初懐疑的ですが、もし経済指標の改善や実質賃金上昇が確認できれば、政権基盤の強化にもつながり得ます。逆にインフレや金利急騰、副作用が顕在化すれば支持率低下は避けられず、経済政策の成否が政権の寿命を左右すると言っても過言ではありません。
安全保障政策の変化:防衛費増強・憲法9条・自衛隊運用
高市政権の誕生により、日本の安全保障政策は一層のタカ派色を帯びると見られます。高市氏はかねてより「防衛は最大の福祉」と語るなど安全保障重視の姿勢を明確にしており、政権発足後は防衛費の大幅増額や自衛隊の役割拡大が進む可能性が高いです。
防衛費増額と軍事力強化 – 既に岸田前政権も防衛費対GDP比2%(NATO標準)への増額を打ち出していましたが、高市政権ではこれを加速・拡充することが予想されます。高市氏は総裁選でも「防衛関連の研究開発費や装備調達費を着実に増やす」と公約し、ミサイル防衛やスタンドオフ(敵基地攻撃)能力の強化を掲げましたhudson.org。実際、自衛隊の「反撃能力」(長射程ミサイルによる対処能力)整備は超党派で進められており、高市氏はこれを積極的に推進する立場です。また、前政権下で決定した防衛予算の大幅積み増し(今後5年で43兆円規模)も、高市政権が継承・実行に移すでしょう。高市氏の姿勢からすれば、防衛費対GDP比2%はあくまで下限であり、必要とあらばそれ以上の予算投入も排除しない可能性があります。こうした軍備拡張路線に対し、中国や周辺国は一層神経を尖らせると予測されますreuters.comreuters.com。
憲法9条改正と自衛隊の位置付け – 高市氏は筋金入りの憲法改正論者であり、特に憲法9条への自衛隊明記を悲願としています。彼女は「占領期に制定された現行憲法の下で日本の平和は守れない」としており、自衛隊を憲法上きちんと位置付けることで軍事的抑止力と士気を高めたい考えですreuters.com。高市政権は憲法改正発議に必要な国会発議要件(衆参2/3)確保に向け、与党内および改憲に前向きな野党(日本維新の会や国民民主党)との連携を強めるでしょう。すでに石破前首相時代、自民・公明・立憲民主の3党で給付付き税額控除を協議する場が設置されましたがbloomberg.co.jp、高市氏は野党との協調について「憲法改正への姿勢を重視する」と述べていますmainichi.jp。これは裏を返せば、改憲に前向きな勢力との政策連携を優先し、改憲反対の野党とは一線を画すことを意味します。実現へのハードルは高いものの、高市政権期に国民投票が行われ、9条改正が争点化する可能性は現実味を帯びています。
自衛隊の運用拡大と抑止力強化 – 防衛政策面では、自衛隊の任務・権限の拡大が見込まれます。高市氏は平時からの敵基地攻撃能力保持を主張するなど、敵に対する抑止的打撃力の整備に積極的です。また、有事の際の駆け付け警護や海外派遣の恒久法制定、同盟国との共同訓練・作戦計画策定の深化にも踏み込むでしょう。憲法9条の範囲内でも、例えば集団的自衛権の行使拡大やグレーゾーン事態への対処強化など、解釈変更や法律改正による運用拡大策が考えられます。高市氏は「台湾有事は日本有事」との認識を示し、自衛隊と在日米軍の統合的抑止力向上を訴えてきました。さらには「日本と台湾で準同盟のような関係を構築することも可能ではないか」と提案したこともありreuters.com、安全保障の枠組みを従来の米日同盟+αへと広げる構想も持っています。この「台湾との準同盟」は中国を強く刺激しかねませんが、日本の安全保障環境が厳しさを増す中、台湾支援や日米台の結束強化を躊躇しない姿勢の表れですreuters.com。
核抑止と安保議論 – 高市政権ではタブー視されがちだった核抑止力の議論も活発化する可能性があります。ウクライナ戦争以降、自民党右派からは米国の「核共有」(Nuclear Sharing)を検討すべきとの声が出ており、高市氏も将来的な議論を否定していません。また、日本の長射程ミサイル保有や攻撃型兵器の制約緩和など、これまで慎重だった分野にも踏み込むことが予想されます。ただし、公明党など与党内の慎重論や世論の反核感情も根強く、高市氏としても直ちに踏み込むよりは、議論のテーブルに載せる段階に留めるとみられます。総じて、高市政権下では日本の安保政策は「専守防衛から積極的防衛へ」緩やかにシフトし、防衛力と抑止力の強化、同盟・パートナーシップの拡大が図られるでしょう。
もっとも、こうした路線は周辺国との緊張を高めるリスクを伴います。防衛費増や軍備強化に対し、中国や韓国は日本の軍事大国化への警戒を強めており、地域の安定を損なう可能性も指摘されていますreuters.comreuters.com。国内でもリベラル勢力や平和団体が反発を強め、安全保障政策を巡る賛否の世論は割れるでしょう。しかし高市氏は「国防なくして国民の暮らしも守れない」と信じて疑わず、批判を押してでも安保政策を転換させる構えと考えられます。結果として、日本の安全保障は戦後最も大きなパラダイム転換を迎える可能性があります。
対中政策:対中強硬化の実現可能性と外交的影響
対中強硬姿勢の鮮明化 – 高市首相の登場により、日本の対中政策は一段と強硬なトーンに傾くと予想されます。高市氏自身、中国に対しては人権問題や安全保障上の脅威を厳しく批判してきた「チャイナ・ホーク(対中強硬派)」ですthedailystar.net。靖国神社への参拝も定期的に行い、中国や韓国の反発を買ってきましたreuters.com。その思想的背景には、安倍元首相譲りの歴史認識(戦後体制からの脱却)や、共産党一党支配への警戒感、台湾海峡の有事リスクへの強い危機感などがあります。総裁選期間中も、高市氏は外国人(特に中国人)による土地買収規制や不法滞在者取締りを強調し、中国資本・中国人の影響力拡大にクサビを打つ考えを示しましたtheguardian.com。こうした言動から、中国側は高市氏について「筋金入りの民族主義者が首相になる」と受け止め、警戒感を露わにしていますeastasiaforum.org。
中国の反応と日中関係への影響 – 北京は高市政権の成立を「最悪のシナリオ」として懸念しているとの指摘がありますeastasiaforum.org。石破前首相が就任後に対中関係の「小康状態」改善に動き出し、習近平国家主席との会談実現に向け歩み寄りを見せていた矢先だけにeastasiaforum.orgeastasiaforum.org、高市氏への交代はその流れを逆行させかねません。中国メディアや専門家は「高市勝利なら日中関係は不安定化する」と論じ、高市氏を安倍氏の後継として対中強硬・ナショナリスト的外交が再来すると警告していますeastasiaforum.org。具体的には、高市政権が台湾との関係強化(前述の「準同盟」構想など)に動けば、中国は猛反発するでしょう。また尖閣諸島周辺での中国公船の活動に対し、日本側がより強硬な取締りに出れば、中国側も対抗措置をエスカレートさせる可能性があります。経済面でも、対中制裁やサプライチェーン見直しを日本が進めれば、中国は日本企業への圧力やレアアース輸出規制など経済的報復に出るリスクがあります。
もっとも、高市氏も現実の外交運営においては一定のプリズマティズム(実用的対応)を見せる可能性があります。注目すべきは、高市氏が今年の総裁選で靖国参拝についてトーンダウンした点です。昨年は「首相になれば靖国参拝する」と明言していたのに対し、今年は参拝への確約を避けましたeastasiaforum.org。この軟化は、就任直後から中国を過度に刺激しない配慮とも読み取れます。また、他の候補である小泉進次郎氏も「靖国参拝は適切に判断する」と述べるなど、候補者全体が慎重姿勢を示していたこともありeastasiaforum.org、高市氏が首相就任後もしばらく参拝を見送る可能性があります。さらに、中国側も高市政権を見据えて予防的なメッセージを発しています。例えば中国高官は「新首相が誰であれ、対中関係の安定は双方の利益だ」と述べeastasiaforum.org、日本側に釘を刺しつつ対話の余地を残そうとしています。高市氏自身、経済界からの対中関係悪化懸念の声も踏まえ、表向きのレトリックと裏での実務協議を分ける二面外交を展開する可能性もあります。
対中強硬策の実現性 – 実際問題として、高市政権がどこまで対中強硬策を実現できるかは、国内外の制約要因に左右されます。まず、日本経済は中国市場・サプライチェーンに深く組み込まれており、急激なデカップリング(経済分離)は企業や消費者に跳ね返ります。経団連など財界は中国との関係悪化に神経質で、高市政権にも慎重な外交を求めるでしょう。また与党公明党は中国とのパイプを持ち対中融和的な立場を取るため、高市氏が一方的に突っ走ることは難しい面があります。さらに米国の出方も重要です。バイデン前政権(あるいはトランプ政権2期目)は対中強硬で日米協調していますが、米中関係が仮に安定化すれば日本だけが突出して強硬になることは望まれません。従って、高市政権は基本的に米国の対中戦略と歩調を合わせつつ、国内保守層へのアピールとして限定的な強硬姿勢を示すという線を狙う可能性があります。例えば人権問題(新疆ウイグルや香港)の非難決議採択や、一部先端技術の対中輸出管理強化などは実施しやすいでしょう。一方で、中国と完全に対決するような措置(台湾への公式訪問団派遣や南シナ海での自衛隊派遣など)は、エスカレーションを招く恐れから慎重に検討されるはずです。
外交的影響:近隣諸国と国際社会 – 高市政権の対中姿勢は、中国のみならず韓国や東南アジア諸国、さらには欧米にも影響を及ぼします。韓国とは徴用工・慰安婦問題で微妙な関係にありますが、高市氏の歴史観(慰安婦問題での強硬姿勢など)は韓国世論に警戒されており、日韓関係改善には逆風となるかもしれません。他方で北朝鮮の脅威への対応では日米韓の連携が不可欠であり、高市政権も韓国との安保協力は pragmatically 維持するでしょう。東南アジア諸国にとっては、日本の強硬姿勢が米中対立を煽らないか注視されます。ASEANは「どちらの陣営にもつかない」バランス外交を模索しており、日本にも穏健さを求める声があります。欧米諸国は概ね中国に懐疑的なため、高市政権の登場を歓迎する論調もありますが、一部では彼女の歴史修正主義的傾向に懸念もありますtheguardian.com(戦時中の出来事に対する認識が摩擦を生む可能性)。総じて、高市政権の対中強硬路線は国内保守層には支持されつつも、国際社会では慎重な舵取りが求められるハイリスク・ハイリターンの賭けと言えます。
対米関係の今後:親米路線と米中関係との連動
日米同盟の一層の強化 – 高市政権の対米関係は、基本的に親米路線を踏襲・強化する方向です。安全保障面で対中強硬に舵を切る以上、日米同盟の結束強化は不可欠であり、高市氏も「日米同盟は日本外交の基軸」と繰り返し述べてきました。実際、首相就任早々に米国大統領ドナルド・トランプ氏の訪日を受け入れる予定であり、これが高市政権の最初の主要外交イベントになる見通しですreuters.com。トランプ大統領(2025年就任)は「アメリカ第一」の姿勢が強いものの、中国に対しては対決姿勢をとっており、高市首相の国家主義的スタンスとある程度親和性があります。日本政府関係者によれば、高市氏はトランプ氏と個人的なパイプ構築にも意欲を示しており、安倍元首相が築いたような緊密な首脳関係を目指すとのことです。こうしたトップ同士の親密さは、安全保障や通商交渉において日本に有利に働く可能性があります。
安全保障協力の深化 – 高市政権では、日米安全保障協力が一層深まるでしょう。具体的には、「自由で開かれたインド太平洋」戦略の下での日米共同訓練・作戦計画策定の強化、島嶼防衛や宇宙・サイバー領域での連携、そしてクアッド(日米豪印戦略対話)やAUKUS等での協調姿勢が継続・強化されます。高市氏は防衛分野での米国との協力に積極的で、例えばスタンドオフミサイルの共同開発や、防衛装備品・技術の相互融通などを推進する可能性があります。また、核抑止力の観点からも在日米軍の役割を高く評価しており、沖縄など米軍基地負担の軽減に努めつつ抑止力を維持するという姿勢を取るでしょう。対北朝鮮政策でも日米の足並みは揃う見込みで、拉致問題の早期解決に向けて米側に協力を求めるとともに、ミサイル発射など挑発行為には日米共同で圧力を強める構えです。
通商政策と経済協力 – 一方、通商・経済面では高市政権は米国に対し強気の交渉を見せる場面もありそうです。高市氏は2019年の日米貿易交渉で、トランプ政権が日本車に高関税を課そうとした際の経緯を念頭に「日本に不利な合意は見直す余地がある」と発言していますreuters.com。実際、彼女はトランプ前政権との間で締結された日米貿易・投資協定の再交渉に触れ、米国が日本車関税を下げる代わりに日本が巨額投資を約束したディールを「作り直す可能性」に言及しましたreuters.com。これは日本側に不公平との認識がある部分を是正したい意図とみられます。ただ、米国側(特にトランプ大統領)は日本との貿易赤字是正に敏感であり、高市政権がどこまで強硬に再交渉を求めるかは慎重な判断が必要です。下手をすればトランプ氏の不興を買い、再び高関税措置の脅しに直面しかねません。そのため、高市氏は経済安全保障の名目で米国との産業協力を打ち出しつつ、日本に有利な条件を引き出す巧みな交渉を目指すでしょう。例えば半導体供給網の再構築や先端技術開発での日米協力を進め、日本が対米譲歩する代わりに経済的利益を得るウィンウィン関係を模索すると考えられます。
米中関係との連動 – 高市政権の日米関係は、同時に米中関係の動向に大きく影響されます。現在、米国は中国と競争しつつも部分的に対話も模索する複雑な状況にあります。仮に米中関係がさらに悪化し新冷戦的構図が鮮明になれば、高市政権は迷わず米国側に寄り添い、対中包囲網の一翼を担うでしょう。一方、米中が何らかのデタント(緊張緩和)に向かう場合、日本があまりにも対中強硬だと米国から孤立しかねません。このバランスの取り方は難しく、高市外交の試金石となります。幸い、高市氏は米議会とも一定の人脈を持ち(若い頃米議会にフェロー留学の経験ありreuters.com)、ワシントンのシンクタンクなどにも太いパイプがあると言われます。こうしたルートを通じて米国の対中戦略の機微な情報をキャッチし、日本の出方を調整していくと思われます。
総じて、高市政権の対米関係は「安保は緊密、経済は是々非々」の姿勢になるでしょう。安全保障ではこれ以上ないほど米国と歩調を合わせつつ、日本の自主性も示す。その一方、経済では国益を主張し、不公正にはノーと言う。このスタンスは、トランプ的なビジネスライクな交渉術との相性も悪くないかもしれません。もっとも、同盟国としての基本的信頼関係を損ねない範囲で行動する節度が求められ、高市氏がそのバランス感覚を発揮できるかが問われます。
次の国政選挙への影響:支持基盤と野党との力関係
保守票の再結集と広がり – 高市政権誕生の直接の政治的帰結は、自民党支持基盤の変化と次期国政選挙(衆議院総選挙)への影響です。前述の通り、近年の選挙で自民党はコアな保守層の一部を新興右派政党に奪われましたjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。とりわけ2025年7月の参院選では、新興の参政党が1議席から一気に15議席に躍進しtheguardian.com、保守層の受け皿として台頭しました。この参政党は「日本第一主義」を掲げ外国人批判や反エリートの姿勢で若者や保守層の不満をすくい上げていますtheguardian.comtheguardian.com。高市氏は、こうしたネット発の右派勢力に流れた支持を自民党に呼び戻すことが最大の課題です。そのため、高市政権は政策面で参政党などが主張する移民規制や伝統価値の尊重を取り込み、保守層の結束を図っています。実際、高市氏が移民・外国人問題に強い関心を示し、総裁選演説の15分中冒頭8分を外国人政策(不法滞在取締りや外国人土地買収規制)に費やしたのは、参政党などに流れた保守票奪回が狙いとされていますtheguardian.comtheguardian.com。
この戦略が奏功すれば、次期衆院選で自民党は右派票を再結集できる可能性があります。実際、JNNなどの総裁選関連世論調査では「次の自民党総裁にふさわしい人物」で高市氏が28.0%でトップ、小泉氏22.5%、林氏11.4%と、高市氏が国民的支持でも先行している結果も出ていますbloomberg.co.jp。高市氏への期待が高まれば、支持離れした層が「やはり自民党に戻ろう」と考え直すことも考えられます。一方で懸念は、中間層・リベラル層の離反です。高市氏の社会・歴史観はリベラル層に極めて不評であり、穏健保守層の中にも違和感を抱く人がいますjmrlsi.co.jpreuters.com。特に女性票では、高市氏が女性であるにも関わらず、選択的夫婦別姓や同性婚に反対する姿勢が女性有権者の支持拡大を妨げていますreuters.com。世論調査でも高市氏支持は男性に偏る傾向が報じられていますreuters.com。このため、自民党の支持層が右に寄りすぎると、従来自民を支持していた中道層が離れて野党に流れたり無党派化する恐れがあります。
野党との力関係の変化 – 高市政権の発足は、野党側にも影響を与えます。一つは野党再編や共闘パターンの見直しです。立憲民主党などリベラル野党は、高市氏を「極右」と位置付けて対決姿勢を強めると予想されます。立憲民主・共産党などは「高市政権では人権や平和主義が危うい」と訴え、リベラル層の結集を図るでしょう。しかし立憲民主党は支持率低迷が続き、野党第一党としての存在感が薄れています。一方、国民民主党(中道保守)や日本維新の会(改革保守)は、高市政権に協力的なスタンスを取る可能性があります。特に維新は憲法改正や規制改革で高市政権と政策的親和性があり、与党に入らずとも「是々非々の協力関係」を築くことが考えられます。実際、石破政権時に自民・公明が過半数割れした際は、維新などが法案成立に協力する局面もありました。高市政権も参院で過半数割れ状態であるため、維新や国民との部分連合・協力は現実的選択肢です。その結果、野党勢力は従来の与野党二極対立ではなく、高市政権+維新 vs 旧野党勢力(立憲・共産)という構図に変容する可能性があります。この力学は次期選挙でも働き、例えば維新と自民が選挙協力するようなケースも考えられます(大阪など維新地盤では住み分けなど)。
また、新興右派政党(参政党など)との関係も注目されます。参政党は高市政権の右傾化により争点が薄まれば、支持を伸ばしにくくなるかもしれません。しかし逆に、高市政権でも満たされない過激な主張(ワクチン陰謀論等)を掲げて、独自色を強める動きも予想されますtheguardian.comtheguardian.com。参政党の神谷宗幣代表(「ミニ・トランプ」と称される人物theguardian.com)は既存政治への不満受け皿として台頭しており、高市政権が既存エリート政治の延長と映るならば、参政党の勢いが持続する余地があります。
選挙見通し – 次期衆院選のシナリオとしては、大きく二つ考えられます。(1) 高市旋風シナリオ:高市首相への期待感と保守票再結集で自民党が議席を回復し、単独または連立で安定多数を確保。女性初首相効果もあり支持率が選挙まで高位安定すれば、このシナリオです。この場合、高市政権は長期政権化する可能性も出てきます。(2) 分裂・停滞シナリオ:高市路線に対する世論の賛否が割れ、保守票は戻るが中道票が離れ、自民党は過半数割れのまま。野党も大勝はできず、与党が微弱な第1党として政権維持するが不安定というケースです。この場合、高市氏の求心力低下で短期間での退陣もありえます。現時点では、世論調査では自民支持率自体が大きく下落している(参院選後21%)現実がありjmrlsi.co.jp、政権浮揚には時間がかかるとの見方が有力です。ただ高市氏はカリスマ性と明快なメッセージで支持者を熱狂させる力がありjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp、「日本を取り戻す」という力強い物語を示せれば局面転換も期待できます。いずれにせよ、高市政権の行方は次の総選挙での国民の審判に大きく左右され、その結果が政権の寿命を決定づけるでしょう。
メディア対応と報道環境の変化:統制・牽制とネット世論
高市政権の誕生は、日本のメディア環境にも変化をもたらすと考えられます。高市氏は過去に総務大臣(メディア行政を所管)を務めた際、報道機関への強い牽制発言で物議を醸した経緯があります。その代表例が2016年2月の国会答弁で、放送法第4条(政治的公平性規定)を根拠に「政府の決定を批判する放送を繰り返す局には電波停止を命じる可能性も否定しない」と述べた件ですarticle19.org。この発言は「権力者によるメディアへの脅し」と受け止められ、国内外から報道の自由への懸念が表明されましたarticle19.org。実際、国連特別報告者デービッド・ケイ氏も来日報告書で日本のメディア独立性への政治的圧力を指摘し、高市氏の名を挙げていますarticle19.orgarticle19.org。
報道機関への圧力と自己検閲 – 高市政権では、こうしたメディア統制的傾向が強まる可能性があります。たとえば政府寄りでないテレビ局に対して放送法遵守を厳格に求めたり、NHK経営委員などに自らに近い人物を送り込むなど、安倍政権下で見られた手法が再来する懸念がありますarticle19.org。既に日本の報道の自由度ランキングは、2010年の11位から2015年には61位まで低下しましたarticle19.org(特定秘密保護法の施行や政権による圧力が影響)。高市氏は政権奪取にあたり「メディアのフェイクニュースには断固反論する」とも述べており、政権に批判的な報道には徹底的に反撃・訂正要求を行うとみられます。メディア側もこうした圧力を察知し、自己検閲(政権が嫌がるテーマを忖度して避ける)を強める懸念があります。実際、前政権下でも「政権批判で知られるニュースキャスターが降板する」といった出来事が続きましたarticle19.org。高市政権では記者会見での質問を制限したり、批判的な記者を締め出すなどの強硬策も噂されています。これは米国トランプ政権がCNN記者を出禁にした事例などを想起させ、日本版トランプと評される高市氏が同様の対応を取る可能性は否定できません。
ネット世論との関係:「もう一つの広報戦」 – 一方で、高市氏はネット世論を巧みに味方につけるタイプの政治家でもあります。SNSやネット動画での発信力に長け、一部には「高市ファンクラブ」とも言うべき熱狂的支持者コミュニティが存在しますjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。これらネット保守層は既存メディア(いわゆる「マスゴミ」)に強い不信感を持ち、高市政権擁護の世論戦に乗り出すでしょう。具体的には、政権批判の報道が出るとSNS上で「偏向報道だ」と攻撃したり、批判的なジャーナリスト個人を誹謗中傷する動きが予想されます。高市氏自身、こうしたネット上の擁護論調を黙認または密かに後押しすることで、「草の根からのメディア牽制」を実現できる可能性があります。いわば、政府が直接統制しなくとも、支持者ネットワークがメディアを攻撃・監視する構図です。これはトランプ前米大統領がツイッターでフォロワーを煽りメディア批判を展開した状況とも通じます。
情報発信戦略の変化 – 高市政権はまた、情報発信の主戦場をテレビ・新聞からネットへシフトさせるでしょう。首相官邸のYouTubeチャンネルやTwitter(現X)での発信強化、フリーランスやネットメディアとの対話、オンラインでのタウンホールミーティングなど、新時代的な広報戦術を駆使する可能性があります。高市氏は自民党内でもデジタル活用に積極的とされ、SNSで直接国民に語りかけることに熱心です。これにより、従来のマスメディアのゲートキーピングを迂回し、自らのメッセージをダイレクトに支持層へ届けることが可能となります。もっとも、情報発信の自由度が増す反面、フェイクニュースの拡散や陰謀論との境界が曖昧になるリスクも孕みます。高市支持層の中には陰謀論的情報を信奉する一部も存在しtheguardian.comtheguardian.com、政権としてもそうした極端な動きを制御する難しさがあります。
報道環境の展望 – 今後の報道環境は、「高市政権 vs 主要メディア・リベラル論調」「高市政権+ネット支持者 vs 反対派」という二重の対立軸が浮上するかもしれません。政権は批判的報道に神経を尖らせ、メディア側は萎縮しかねない。しかし一方で、ジャーナリズムの側もこの状況を逆手に取り、「報道の自由の危機」として世論喚起を図る可能性があります。過去には、政権からの圧力報道が逆に国内外の批判を招き、政府が軌道修正した例(NHK経営委員問題など)もありましたarticle19.org。高市政権があまりに露骨なメディア統制を試みれば、民主主義の根幹に関わる問題として国会や国際社会で争点化し、政権に打撃を与えるリスクもあります。従って、高市氏としても表立ってのメディア弾圧は避け、巧妙な「アメとムチ」でメディアを操縦するのではないか、との見方もあります。例えば独占インタビューを御用ジャーナリストに与える一方、批判的メディアには情報を出さないなどの懐柔策・締め付けを使い分ける可能性があります。
いずれにせよ、高市政権期において日本の報道の自由度ランキングがさらに下落する懸念は拭えません。市民としては、複数ソースから情報を得てファクトチェックを心がけるなど、メディア環境の変化に主体的に向き合う必要があるでしょう。
ネット保守・アンチリベラル潮流の中の高市政権:トランプ政権や欧州右派との共通点と相違点
高市政権は、国内外のネット保守・ポピュリズム的潮流の一環として位置付けることができます。日本のネット世論では近年「反リベラル」や「愛国主義」を掲げる声が大きくなっており、高市氏はそうしたネット右翼(ネット保守)層から熱狂的支持を受ける政治家ですjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。これは米国のドナルド・トランプ前大統領や、欧州の右派ポピュリスト(イタリアのジョルジャ・メローニ首相、フランスのマリーヌ・ルペン、オランダのヘルト・ウィルダースなど)に支持が集まった構図と共通しています。それぞれの国情は異なりますが、「既存エリートへの不満」「グローバリズムへの反発」「移民や多文化主義への拒否感」「自国の伝統・アイデンティティの重視」といったキーワードが浮かび上がります。
共通点:ナショナリズムと反グローバル – 高市氏とトランプ・欧州右派に共通するのは、強いナショナリズムと反グローバリズムの色彩です。高市氏は「日本をもう一度世界のトップに」と語りtaipeitimes.com、国家の誇りと力を取り戻すことを訴えます。これはトランプ氏の「Make America Great Again(米国を再び偉大な国に)」と響き合うスローガンです。また移民や外国人に対する警戒感も共通しています。高市氏が「外国人による神聖な奈良の鹿への虐待」発言をして物議を醸しましたがtheguardian.comreuters.com、これは事実関係が不確かでも自国文化を侵す他者への怒りを煽る点でトランプ流のレトリックに似ています。欧州の右派も移民(特にイスラム教徒)を治安悪化や文化喪失の原因と名指しし支持を広げましたが、高市氏も外国人犯罪や土地買収問題をクローズアップして保守層の不安に応えようとしましたtheguardian.com。さらに、いずれも既存メディアやリベラル勢力への強い不信を持っています。トランプ氏は主流メディアを「フェイクニュース」と攻撃し支持者が喝采しましたが、高市氏支持者も朝日新聞などリベラルメディアを敵視する傾向が強く、SNSで攻撃しています。政治家本人もそれを利用・助長する構造が見られます。
また、経済政策でもポピュリスト的共通点があります。高市氏は保守でありながら財政積極派で、低所得者支援や減税を訴えますbloomberg.co.jp。欧米の右派ポピュリストも、減税や社会保障の自国民優先(例えばルペン氏はフランス人向け福祉拡充を主張)など、大きな政府的な公約を掲げることが多いです。伝統的保守の小さな政府路線とは異なり、「自国民のための積極財政」という点で一致します。これはグローバル企業や外国へのコストは削り、国家が直接庶民を助けるというナショナルな再分配思想と言えます。高市氏の場合、積極財政で国防も経済も強くするという国家主義的ケインズ主義の様相がありますbloomberg.co.jpreuters.com。
相違点:既成政党内からの台頭 vs 反既成政党 – 一方で、高市政権とトランプ・欧州右派には相違点も存在します。第一に、高市氏は日本の長年の与党・自民党内から登場したのに対し、トランプ氏は共和党という既成政党を乗っ取りましたが政治経験ゼロのアウトサイダーでした。また欧州の右派(メローニ氏のイタリア「同盟」やルペン氏の「国民連合」など)は既存主流政党ではなく反体制的新党として支持を伸ばしました。高市氏は長年自民党に属し大臣職も歴任したエスタブリッシュメントの内部の人物です。そのため、「反エリート」を掲げながら自らもエリート層の一員という二面性があります。この点は、エスタブリッシュメントでありながら草の根支持を得た英国のマーガレット・サッチャー元首相に高市氏が自らを重ねている部分とも言えますreuters.com。サッチャーは既成政党内で革命を起こしましたが、高市氏も自民党内での革命児と言えるかもしれません。
第二に、対米姿勢の違いが挙げられます。欧州の右派政党の中には反米・親ロシア的な立場を取る者もいます(例えばルペン氏はNATO脱退やロシア融和を主張した過去がある)。トランプ氏自身も「同盟国ももっと自立せよ」と主張し在日米軍駐留費増額を迫るなど、従来の親密な同盟観からは逸脱する面がありました。一方高市氏は強烈な親米派であり、米国との同盟強化こそ国益と信じていますreuters.com。このため、欧米右派にありがちな「自国第一で同盟軽視」という路線とは異なり、高市氏は「日本第一ではあるが、それは日米同盟を基軸に成し遂げる」という立場です。この点、日本の右派は戦後米国との関係を肯定する親米保守が主流であり、反米ポピュリズムにはなりにくい土壌があります。
第三に、宗教・社会政策の文脈です。欧米右派の多くはキリスト教保守や反イスラムの色彩が強く、LGBTや中絶の問題など道徳アジェンダを前面に出すことがあります。高市氏も同性婚や夫婦別姓に反対し伝統的家族観を守る立場ですがtheguardian.com、日本ではそれら社会問題が選挙の争点になる度合いは欧米ほど高くありません。高市氏の支持層も、LGBTよりもむしろ中国や憲法、経済政策に関心が強いでしょう。ただし**「ジェンダー平等」や「多様性」に懐疑的**な点は共通しており、高市政権下ではジェンダー政策が停滞する懸念があります。この点は欧州右派と歩調を合わせ、「伝統的家族」「少子化対策としての家族観奨励」を掲げる傾向です。
最後に、パーソナリティと統治スタイルの違いも重要です。トランプ氏は型破りで衝動的な統治を行い、しばしば政府内部が混乱しました。欧州右派の指導者も強烈な個性で知られます。一方、高市氏は長年の政治経験から政策通であり、内政・外交の細部にも通じています。そのため統治スタイルはもう少し官僚機構や制度を尊重したものになると考えられます。例えばトランプ氏は専門家の助言を無視してツイッターで政策を急転換させることも多々ありましたが、高市氏は事前に根回しや調整をしつつ自らの色を出すタイプでしょう。これは**「体制内革命」**を目指すアプローチとも言えます。既存の仕組みを壊すというより、既存の枠組みの中で右派色を極限まで強めていくイメージです。したがって、見た目ほどの急激な変化は起きず徐々に政策が右傾化する、という展開もありえます。
しかしながら、こうした相違点があるにせよ、高市政権の登場は世界的な右派ナショナリズム潮流の日本版として大いに注目されています。海外メディアは高市氏を「日本のタカ派ナショナリスト」「第二のサッチャー」などと報じておりreuters.comtheguardian.com、その政策が日本を大きく右にシフトさせると見ています。特に中国や韓国からは「高市時代の日本は戦前回帰の可能性がある」との警戒もありますtheguardian.com。一方で国内の熱狂的支持者にとっては、ネットで長らく待望してきた理想の保守政権の実現であり、高市氏にトランプや欧州右派リーダー同様のカリスマ的リーダー像を重ねています。まさに「右からの革命」が起きたとの受け止めです。この熱量と現実政治とのギャップが今後どう収斂していくかがポイントでしょう。
おわりに
高市早苗政権の発足は、日本政治の各方面に大きなインパクトを与えることになりました。政権の寿命は党内基盤の脆弱さと支持率動向次第で不透明ですが、少なくとも次の国政選挙までは保守層の結集と党勢回復に全力が注がれるでしょう。経済政策では財政拡大と成長重視へとかじを切り、停滞打破が図られる見込みですbloomberg.co.jpreuters.com。安全保障では戦後最大級の政策転換が起こり、防衛力強化と憲法改正が現実の日程に上ってきますreuters.com。対中関係は緊張をはらみつつも、高市氏の出方次第で変動し、対米関係は蜜月と自主性のバランスを取る難しい舵取りとなりますreuters.comreuters.com。国内政治では、高市カラーが強まるほど野党とのイデオロギー対立が鮮明化し、世論は二極化するかもしれません。またメディア環境は圧力と反発がせめぎ合い、報道の自由や民主主義の健全性が試される局面も訪れるでしょうarticle19.orgarticle19.org。
高市政権を一言で表せば、「ネット保守が待ち望んだ体制内革命」とも言えますjmrlsi.co.jpjmrlsi.co.jp。それはトランプ政権や欧州右派政権と脈絡を同じくするもので、日本もまた21世紀のポピュリズムの波から無縁ではなかったことを示していますjmrlsi.co.jp。もっとも、革命には痛みが伴います。高市氏の掲げるビジョンが実現可能性の高い具体策へと昇華し、日本の停滞を打破するのか、それとも対立と混乱を生むだけに終わるのか。専門メディアや有識者の分析は「高市政権の前途は平坦ではないが、そのインパクトは計り知れない」と総括していますreuters.comtheguardian.com。私たち有権者・国民も、この変化の行方を注視し、冷静かつ的確な判断で民主主義の舵を取っていくことが求められていると言えるでしょう。
参考文献・出典:(高市政権に関する政治・経済・外交専門メディアの報道、および有識者分析より引用)theguardian.comreuters.comjmrlsi.co.jptaipeitimes.comreuters.comreuters.comarticle19.orgjmrlsi.co.jp
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