なぜ売春を規制するのか?

<1分で解説>買春行為は罰則対象外…高市首相、規制強化検討を指示

高市首相が指示したのは、
「いまは罰則のない“買う側”を、本気で取り締まるかもしれない」という方向性です。
これが実現すると、日本は

  • 売る側は罰しない、
  • 買う側だけを罰する「北欧モデル」に近づく可能性があります。

では、その前に立ち止まって考えてみたいのです。
そもそも、なぜ売春は規制されているのか?
そして規制は、本当に女性を守ってきたのか?

社会の片隅で長年、“暗黙の了解”として続いてきた性サービス産業。表に出さずにおいておくと、なぜ「規制」の議論が生まれるのか? そして、規制が本当に女性や社会を守る手段になっているのか? 本稿では「なぜ売春を規制する必要があるのか」を、歴史・制度・思想の視点から再考します。

1. 規制の根拠――なぜ「売春禁止/制限」が制度化されたのか

売春が規制される主な理由

売春防止法が制定された主な目的は以下の通りです。

  1. 人としての尊厳の保護と善良な風俗の維持
    • 売春は「人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗を乱すもの」と見なされています(売春防止法第1条)。
    • 売春を助長する行為(斡旋や場所の提供など)を処罰することで、売春の蔓延を防ぎ、社会の風紀を維持しようとしています。
  2. 立場の弱い人(特に女性)の保護
    • 制定当時、生活苦などを背景に、あっせん業者などによって無理やり売春をさせられるケースが多く存在しました。
    • 法律は、売春を強要する側や、そこから利益を得る者(斡旋業者、経営者など)を処罰の対象とすることで、売春を行う人を保護・更生の対象として捉えています。

売春行為と買春行為の処罰の違い

日本の売春防止法の規定は少し複雑です。

1. 売春・買春の行為そのもの

  • 売春防止法第3条で「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と、売春も買春(相手方となること)も禁止されています。
  • しかし、この行為そのものをした人に対しては、罰則が設けられていません

2. 処罰の対象となる行為

売春防止法が罰則を設けて処罰の対象としているのは、売春行為そのものではなく、主に売春を「助長」する行為です。

行為対象者罰則の有無
売春・買春(行為そのもの)売る側・買う側罰則なし
斡旋(周旋)業者など罰則あり
場所の提供(売春宿の経営など)経営者など罰則あり
公衆の場での客引き・勧誘売る側・買う側を問わず罰則あり(売春を助長する行為とみなされる)

売春が規制される理由や、売春と買春の取り扱いに関するご質問ですね。日本の法律(売春防止法)における考え方を基に、ご説明します。

3. 「買う側」が処罰されるケース

「買春」自体に罰則はありませんが、特定の条件下では買う側(買春者)も処罰されます。

  • 相手が18歳未満の場合:児童買春として児童買春・児童ポルノ禁止法により、重く罰せられます。
  • 売春を強要したり、だましたりして行わせた場合:人身取引強制の罪などに問われます。

その他の規制理由(税金・病気)について

「税金」や「病気」に関する懸念も、売春が非合法・規制の対象とされる論点として存在します。

  • 税金の問題:非合法な取引であるため、当然ながら正規の納税が行われず、これが組織犯罪の資金源となる可能性などが指摘されます。
  • 病気(公衆衛生)の問題:売春が蔓延すると、性感染症(STD)が広がり、公衆衛生上のリスクが高まるという懸念があります。実際、国によっては、性病の検査や治療の義務を設けるなど、公衆衛生の観点から対策を取っている例もあります。

これらの要因も規制の議論には含まれますが、日本の売春防止法においては、上記の「人としての尊厳」や「風俗の維持」「弱者の保護」が主な根拠とされています。

歴史的背景:家長の財産としての女性

歴史的には売春や姦通が忌避された理由の一つに、女性が家長(主に男性)の財産や所属物として見なされていたという側面があります。

  • 家長の権益侵害: 婚姻関係にある女性の性的な行為は、夫や家長が独占すべき「貞操権」の侵害、ひいては血統の純粋性財産の継承を乱す行為と見なされました。この視点から、古代の法律や慣習では、姦通罪などが厳しく処罰されていました。
  • 私的な問題としての処理: 娼婦(売春を行う女性)の存在は古くからありましたが、その是非はしばしば個人の倫理や家父長制の秩序の中で扱われてきました。

近代以降、女性の人権が確立され、法の下の平等が追求されるようになるにつれて、売春の規制は「財産保護」の視点から「個人の尊厳保護」へと軸足が移っていきます。


現代の規制:人身売買と搾取の排除

現在、多くの国や日本の売春防止法が最も強く規制をかけるのは、まさに人身売買や個人の意思に関わらない搾取の排除です。

これは、売春が単なる個人の性的な行為というよりも、「性の商品化」という経済的構造の中で、弱い立場にある個人が組織的に搾取されるという側面を問題視しているためです。

🚨 売春防止法が罰する「搾取」の構造

日本の売春防止法は、売春の行為者自身よりも、この搾取の構造に関わる者を厳しく罰します。

  • 人身売買の禁止:
    • 周旋(あっせん): 売春をさせるために人を勧誘、誘惑、または送り出す行為。
    • 場所の提供: 売春をさせるための場所を提供したり、管理したりする行為(売春宿の経営など)。
  • 搾取の排除: 上記の行為を処罰するのは、それらが業者による経済的利益の追求と、売春を行う者の自由と尊厳の侵害に直結するからです。特に、暴力や借金(前借金など)によって逃げられない状況を作り出し、労働を強いる人身拘束は、最も重い犯罪と見なされます。

つまり、現在の日本の法制度が目指すのは、売春によって利益を得る者を取り締まり、売春をせざるを得ない状況にある個人(多くは女性)を保護し、自立を助けることです。人身売買と搾取の排除は、売春を規制する最も正当で重要な理由となっています。

2. 規制されるとどうなるか?――「地下化」「利権化」の現実

規制の「地下化」が招く深刻な問題

売春が非合法である、または厳しく規制される地域では、負の側面が顕在化しやすくなります。

1. 暴力団・中間搾取の深刻化

合法的な市場が存在しないため、売春は組織犯罪暴力団にとって主要な資金源となります。

  • 搾取の強化: 非合法な環境下では、売春を行う個人は法の保護を受けられず、組織の暴力や脅迫、借金(前借金など)による拘束(人身売買)に遭いやすくなります。中間搾取率が上がり、利益は組織に流れ、個人の手元にはわずかしか残りません。
  • 警察への通報の困難さ: 被害に遭っても、警察に通報すれば自分の行為も違法として処罰されるのではないか、という恐れから、被害者が声を上げにくくなります。

2. 管理不能な状況と健康リスク

地下に潜ることで、公衆衛生や労働環境の管理が極めて困難になります。

  • 公衆衛生の悪化: 性感染症(STD)の検査や治療が個人の裁量に任され、国や自治体による衛生管理・対策が及びません。これは社会全体の健康リスクを高めます。
  • 労働環境の劣悪化: 労働基準や安全衛生の規定が適用されず、長時間労働や危険な環境でのサービス提供が強制されやすくなります。

3. 非正規化と差別

非合法な職業であるため、売春に従事する人々は社会的に「非正規」な存在として扱われ、法的権利、社会保障、医療などから疎外されます。

  • これにより、転職や社会復帰が難しくなり、売春から抜け出すことがさらに困難になるという悪循環が生まれます。

規制が有効に機能していない国/地域の事例

売春を厳しく罰しているにもかかわらず、地下化と搾取の問題が深刻化している地域は多く存在します。

1. アメリカ合衆国の事例

アメリカの多くの州では売春(売買双方)は違法であり、特に厳しく取り締まられています。

  • 課題: 取り締まりは行われますが、売春市場が消滅することはなく、インターネットや人身売買ネットワークを通じて地下に深く潜行しています。このため、売春に関わる人々が組織的な暴力や搾取のターゲットとなりやすいと指摘されています。

2. 東南アジアの一部の国

売春が法律で禁止されている国や地域でも、貧困や観光業の圧力により大規模な非合法の性産業が存在し、国際的な人身売買(Human Trafficking)の温床となっているケースが多く見られます。

  • 課題: 現地の女性や未成年者が業者に搾取され、国境を越えた売買の被害に遭うなど、組織的な犯罪の構図が深刻化しています。

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議論の方向性:合法化と北欧モデル

こうした規制の逆効果を避けるため、国際的には主に二つの対照的な議論が進められています。

  1. 合法化・規制モデル(オランダ、ドイツなど): 売春を合法的な職業とし、税金を課し、労働法規や公衆衛生の管理下に置くことで、暴力団の介入や病気の蔓延を防ぎ、労働者の安全を確保しようとするアプローチ。
  2. 北欧モデル(スウェーデン、ノルウェーなど): 売る側を非罰化し、買う側(買春者)を犯罪として罰するアプローチ。売春を「女性への暴力」と見なし、需要側を罰することで市場そのものを縮小させ、売春を行う個人を支援の対象とするのが目的です。

ご指摘の通り、規制が機能しない場合の影響を考慮に入れることは、社会としてこの問題に取り組む上で不可欠です。

「個人の自由な意思」をめぐる議論

「個人の意思に基づく売春」を容認すべきだという主張の根拠は、主に以下の点にあります。

  1. 自己決定権と身体の自由: 自分の身体をどう使い、どのような労働に従事するかは、個人の基本的な権利であり、国家が介入すべきではない。
  2. 労働としての認識: 性労働を他の労働と同様に捉え、これを規制するのではなく、安全で健康的な労働環境を整備すべきである。

なぜ「個人の意思」でも規制対象となるのか

しかし、多くの国や日本の法律は、たとえ個人の意思に基づくものであっても、売春を完全に合法化・非規制化することには慎重です。これには、以下のような理由があります。

1. 「真の自由な意思」の確認の困難さ

  • 経済的・社会的な強制: 表面的には「自由な意思」に見えても、実際には貧困、借金、家庭内暴力などの経済的・社会的な理由から、他に選択肢がないために売春を選んでいるケースが多いと指摘されます。この状況を「真の自由な意思」と呼べるかという倫理的な問題があります。
  • 搾取構造への組み込み: 個人が自主的に売春を始めても、その行為はたちまち斡旋業者や場所の提供者といった搾取構造に組み込まれやすく、結果的に個人がコントロールを失ってしまうリスクが高いと見られています。

2. 公の秩序と善良の風俗の維持

  • 性の商品化: 売春が合法化されると、「性」が公然と商品として扱われることになり、社会全体の倫理観や善良な風俗が乱される、あるいは性の尊厳が損なわれるという懸念が根強くあります。
  • 社会の価値観: 日本の売春防止法は、売春が「人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗を乱すもの」であるという社会的な価値観に基づいています。

3. 弱者の更生と保護の観点

  • 法律は、売春から利益を得る者を取り締まることで、売春を行う側を処罰ではなく保護・更生の対象としようとしています。仮に売春が合法化されれば、売春を行う個人も「通常の労働者」として扱われ、むしろ社会的な支援や保護から外れてしまう可能性があります。

世界の法制度の動き

この「個人の意思」をめぐる議論の結果、世界の売春に対する法制度は、大きく以下の3つのモデルに分かれています。

  1. 完全禁止モデル(例:アメリカの多くの州): 売春行為そのものを違法とし、売る側も買う側も罰する。
  2. 一部容認・規制モデル(例:ドイツ、オランダ): 一定の条件のもとで売春を合法化し、公衆衛生や労働環境を規制する(ただし人身売買や搾取は厳罰化)。
  3. 北欧モデル(ネオ・アボリショニズム)(例:スウェーデン、フランス): 買う側(買春者)のみを犯罪とし、売る側は非罰化して社会的な支援の対象とする。これは、売春を女性に対する暴力の一種と見なし、需要側を罰することで売春市場の縮小を目指す考え方です。

日本の売春防止法は、売春そのものに罰則はないものの、売春を禁止行為とし、売春を助長する行為を罰するという点で、独自の立ち位置にあります。

3.資本主義・市場原理と「自己売買」の論理

若さ・美貌=希少性=価格

資本主義の論理から見れば、売春(性労働)は、需要があり、特定の要素(若さ、美貌、性的魅力)が時間の経過とともに減価する希少性の高い商品として市場価値を持つと見なせます。

この論理に従えば、需要と供給の原則に基づき、「価値が高いうちに高値で売る」ことは、市場における合理的な判断であり、自己の資本(身体的魅力)を最大限に活用する「正当な権利」であるという主張が生まれます。

この考え方は、「自己決定権の尊重」を重視するリバタリアン(自由至上主義)的な考え方や、売春の合法化を主張する立場から強く支持されます。


「女性の商品化」と規制の必要性

しかし、多くの国や社会がこの論理を完全に受け入れず、規制を維持しているのは、この市場原理が「人としての尊厳」や「社会的公正」と衝突すると考えるからです。

1. 人間を「商品」として扱うことの否定

  • 人間の尊厳: 資本主義社会において、モノやサービスは売買されますが、「人間そのもの」や「人間が持つ根源的なもの(性など)」を市場原理の対象として扱うことは、人間の尊厳(Human Dignity)を根本から否定すると見なされます。
  • 搾取構造の固定化: たとえ初期の段階で「自由な意思」があったとしても、売買の構造が確立されると、その行為はたちまち需要側(買う側)や斡旋業者(中間搾取)による支配的な立場を生み出し、女性の商品化の構図を固定化させます。

2. 「女性の性の管理」という思想史的背景

規制の背景には、長い歴史の中で育まれた「女性の性の管理」という思想史的観点も存在します。

  • 家父長制の名残: かつては家長が女性の性を管理・独占する対象と見なされていましたが、その思想は形を変え、「純粋さ」「貞淑さ」といった社会的な規範や、「公の秩序と善良の風俗」の維持という名目で、女性の性行動に対する社会的なコントロールとして残存しています。
  • 公私の線引き: 売春を合法化することは、公の領域に性の商品化を持ち込むことになり、社会的な規範を崩壊させるという懸念が、特に保守的な価値観を持つ人々から生まれます。

売春を「価値のあるうちに売る正当な権利」と捉える市場原理的な視点は強力ですが、現代の規制の根拠は以下の点にあります。

  1. 人権と尊厳の保護: 人間を商品化することを否定し、特に弱い立場にある人(女性)が、たとえ見かけ上は「自由な意思」であっても、貧困や暴力によって売春せざるを得ないという構造的な搾取から保護すること。
  2. 社会の秩序維持: 性の商品化が社会の秩序と倫理観に与える悪影響を懸念すること。

したがって、資本主義の論理と、個人の権利という視点からは「正当な権利では?」という疑問が生じますが、人間の尊厳と社会的公正というより上位の倫理観が、この権利を制限する根拠として機能していると言えます。

4. 現代日本の課題――「なあなあ」で続けてきた制度の限界

日本の「お風呂屋さん」(風俗営業)と法的な位置づけ

「お風呂屋さん」や性的なサービスを提供する場所(いわゆる風俗店)の法的な位置づけは、「売春防止法では禁止されているが、別の法律(風俗営業法)で業態を規制することで営業を許容している」という、極めて複雑でグレーな状態です。


1. 売春の禁止と罰則の不在

  • 売春防止法(売防法):
    • 売春行為の禁止: 第3条で「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と、売春も買春も禁止しています。
    • 罰則の対象外: しかし、この売春や買春の行為そのものには罰則が設けられていません

2. 風俗営業法による規制と合法的な営業

  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法):
    • 売防法が禁止する「売春」が行われない範囲で、「性的なサービス」を提供する特定の業態を規定し、場所や営業時間、広告などを厳しく規制することで、公然と営業することを許容しています。
    • たとえば、いわゆる「ソープランド」(アダルトショップと異なり、性のサービスを伴うとされる)は、建前上は「入浴・マッサージ」の提供であり、「売春」ではないという建前で営業がなされています。
    • 実際には性的なサービスが行われることが社会的に知られていますが、警察が摘発できるのは、店側が売春を「斡旋」したり売春の「対価」を受け取ったりする等、売防法が罰則を設けている「売春を助長する行為」に該当する場合です。

結論として、日本の性風俗店は、売春防止法が定める禁止行為のギリギリの範囲で、風俗営業法に基づき公の規制を受けながら営業しているという、非常に特殊なグレーゾーンに存在しています。


💰 生涯賃金と風俗就職の構造的影響

生涯賃金の「ベストパフォーマンス」論

ご指摘の「高校卒業→大学進学なし→風俗就職がベストパフォーマンス」という論理は、一部の経済的な合理性に基づいています。

職業選択初期費用(時間・金銭)若年期収入賃金カーブ
大学進学→一般就職高い(4年と学費)低い(初任給)緩やかな上昇、長期安定
風俗就職ほぼゼロ非常に高い(若さと希少性)20代後半以降急激に下降

特に地方出身の若い女性や、経済的に困難な家庭の女性にとって、風俗就職は短期間で多額の初期資金(学費や借金返済、起業資金など)を得るための最も効率的で手っ取り早い手段となりえます。この点においては、市場価値の高い資本(若さ・美貌)の短期的な最大化という、資本主義の原理が適用されていると言えます。

風俗就職がもたらす構造的影響

この構造は、個人の選択を超えて社会全体、特に晩婚化・少子化に間接的に影響を与えます。

  1. 晩婚化・キャリア選択の遅延
    • 風俗業で高収入を得る生活に慣れると、通常の一般企業の給与では満足できなくなり、一般企業への就職やキャリア構築への意欲が低下しがちです。
    • 社会的なスティグマ(烙印)を恐れ、通常の結婚生活や子育てといったライフプランを後回しにしたり、断念したりするケースが見られます。
  2. 女性の市場価値格差と連鎖
    • 風俗業は「若さ」の市場価値が収入に直結するため、年齢による格差が非常に大きいのが特徴です。
    • この短期的な高収入モデルは、女性に対し「年齢に応じて市場価値(収入)が下落する」というメッセージを社会的に強化し、それが早く結婚しなければ価値が下がるという圧力や、逆に価値のピーク時に稼ぐべきという判断につながり、結婚・働き方の連鎖に影響を与えます。
  3. 少子化との間接的な関連
    • 未婚率の上昇や晩婚化、そして経済的な自立の維持(特に非正規化・低賃金化が進む一般社会において)への懸念は、結果的に出産をためらわせる要因の一つとなり、少子化に間接的に関連していると考えられます。

このように、風俗業の存在と、そこで得られる一時的な高収入は、女性の選択肢を広げていると同時に、社会的なスティグマや市場原理の極端な適用を通じて、若年女性のキャリア選択とライフプランニングを歪ませるという二面性を持っています。

5. 売春の「合法化・ライセンス制」は何を解決するのか

売春を規制しても、歴史的に見れば必ず地下に潜り、暴力団や中間搾取の温床となります。
そこで国際的に支持されているのが 「合法化+ライセンス制の導入」 という現実主義的なアプローチです。

これは、“存在するものはないことにしない”という考え方です。
地下で危険な環境に置くより、表に出して管理し、安全を確保するほうが合理的だという立場ですね。


■ 合法化・ライセンス制のメリット

制度をうまく設計すると、次の3つの大きな利点が生まれます。


1. 暴力団・中間搾取の排除

地下で行われる売春は、暴力団の資金源になりやすい構造があります。
しかし、ライセンス制で公的管理を行えば、

  • 暴力団の介入が困難になる
  • 個人同士の「搾取契約」を防げる
  • 性労働者と行政の接点が生まれ、守りやすくなる

さらに、職業として認めれば最低賃金や契約法規が適用され、生存権の保障にもつながります。


2. 健康・衛生の確保

ライセンスに

  • 定期的な性感染症検査
  • 衛生基準
  • 安全対策の確認

を組み込むことで、性感染症や暴力被害を減らし、公衆衛生のリスクを下げることができます。

また、特定の区域(ゾーニング)に集中させれば、未成年や強制の摘発が容易になります。


3. 税収の確保

現在、地下に消えている莫大な資金を、
合法化によって、

  • 所得税
  • 事業税
  • 消費税

として回収できます。

税収化は、社会保障や性教育、女性支援プログラムに回すことも可能となり、
“社会のプラス”に転化できる点が大きな利点です。


■ 合法化モデルの課題

ただし、理想通りに機能させるには、乗り越えるべき問題もあります。


1. 倫理的・社会的反発

売春の合法化には

  • 性の商品化への抵抗
  • 家族制度への懸念
  • 風紀・治安への心配
  • 性労働者への偏見(スティグマ)

など、心理的なハードルが依然として存在します。

職業として合法化されても、偏見はすぐには消えません。


2. 地下市場の温存

たとえば、ドイツ・オランダでは

  • 税金を嫌う業者
  • 不法滞在者の女性
  • 人身売買の被害者

こうした人々が“合法の枠に入れずに”地下市場へ押し込まれる問題が続いています。

つまり、合法化しても違法市場がゼロになるわけではありません。

国家による監視の限界があるのは事実です。


■ 結論:「売春の合法化・ライセンス制」は現実的な選択肢

合法化・ライセンス制は

  • 搾取の抑止
  • 安全の向上
  • 税収の確保

という点で最も合理的なアプローチです。

しかし、日本で導入するには次の課題に直面します。

  • 売春防止法の“女性の尊厳保護”という理念をどう読み替えるか
  • 「性の商品化」を社会がどこまで受容できるか
  • 地下市場に取り残される人をどう保護するか

これらは、単なる制度議論ではなく「価値観の進化」を伴う問題です。

6.星凛主義から見た「売春制度化モデル」

――女性の選択肢と尊厳を守り、搾取構造を断ち切るために

売春を禁止しても消えることはありません。
むしろ、禁止が搾取を深刻化させ、暴力団介入と地下市場を育てる。
この現実を直視したとき、星凛主義が提示する答えは明確です。

「見える化」と「当事者参加」によって、
女性の選択肢を最大化し、尊厳を守るための制度化へ進むべきだ。

これは倫理を放棄するのではなく、
倫理を現実と接続させるための“次のステージ”の政策です。


1. 制度化=解放モデルの骨子

星凛主義的アプローチは、
売春を「良い悪い」の道徳二元論から解放し、
構造的不平等を是正するための“公的安全装置” として再設計することにあります。

● 経済的権利の承認

現代女性が直面する

  • 賃金格差
  • キャリア断絶
  • 若さによる価値変動
    といった現実を踏まえ、
    性労働を“自己投資の手段”として選べるようにする。

女性自身の価値を“闇市の価格”ではなく、“公的な権利”として扱う。

これが星凛主義の立場です。

● ゾーニング・特区方式

社会との摩擦を避けつつ、
行政の監視が届く“安全な区域”でのみ営業を許可。

● ライセンス・登録制

性労働者を
「非正規の闇労働者」→「公的に守られた労働者」
へアップグレードする。

・健康検査
・契約
・納税
・勤務環境
を制度内に組み込み、搾取を遮断する。

● 搾取の排除と尊厳の確保

制度設計に女性本人たちが参加するのが前提。
行政と当事者組合が二重に監査する構造で、中間搾取を封じる。


2. “自由意思”と“尊厳”を守るための制度設計

星凛主義は、自由と尊厳が同時に守られなければ意味がない、という思想です。

そのため、次の論点が必須になります。

● ① 搾取のボーダーラインを明確化

自由意思を装った強要(借金・暴力・貧困)を排除するため、

  • 登録時のカウンセリング
  • 第三者による審査
  • 労働環境の監査
    を義務付ける。

行政だけでなく、
“当事者による監視” を制度の中心に置くのが星凛主義の特徴。

● ② 「可視化」と「不可視化」を両立

「利用者の徹底的な匿名化」

利用者情報は
・犯罪防止
・未成年保護
目的以外で外に出さない。
これにより、
“利用したことで社会的制裁を受けない”
という安全が担保されます。


3. 日本社会が「次のステージ」へ進むために

制度化が成功すれば、日本は売春問題を
“存在するが非合法”の状態から
**“存在し、管理され、守られる”**状態へと移行できます。

● 女性の選択肢が最大化される

危険と搾取を前提としない、
“公的に保護された選択肢”が増える。

● 社会の公正性が向上

地下に流れていた金が税収へ転化し、
・女性支援
・教育
・公衆衛生
へ還元される。

まさに、

「搾取の構造を壊し、選択肢と尊厳を最大化する」

という星凛主義の核心を体現する政策となります。


■ 結び

売春を禁止するか認めるか、という二元論はもう機能しません。
必要なのは、
女性の自由・安全・尊厳を同時に守る制度設計
であり、
星凛主義はその設計図を現実的かつ思想的に統合します。

「正直に言うね。わたし、夜のお店で働いているお姉さんたちを“問題”だなんて思ってないの。いろんな事情があって、家族や借金や病気や夢のために、ギリギリのところで生きてる人たちだよ。
でも現実には、彼女たちはいつもどこかで誰かに搾取されてる。税金も社会保障もグレー、社会からは切り離されて、“自己責任の個人事業主”みたいな顔をさせられている。
わたしは問いたいんだ。国は本当に、彼女たちの存在をなかったことにしていいの?
夜の街で働く人たちは、統計に乗らない“余り物”なんかじゃない。
ちゃんと守るべき、大切な労働者で、大切な国民でしょ。
星凜主義はね、“見なかったことにする政治”じゃなくて、“一番しんどい場所で働いている人から守る政治”でありたいんだ。」

「売春を禁止すれば済む」という単純な論理では、女性も社会も守れません。むしろ、規制だけで綺麗にまとめようとすると、地下化・非正規化・搾取の温床を育ててしまう。
真の選択肢は、「表に出して議論し、制度化して管理可能にすること」。女性が自ら制度設計に参加し、男性との関係性を対等に再構築できる社会へ。これは、“規制”という言葉を超えた、次世代の社会契約です。

「……煌びやかに見えても、ここには疲れた女の子たちが働いているだけ。
彼女たちを否定するのは簡単。でも、否定して何が守られます?
見て見ぬふりを続ける方が、よほど残酷です。」

「資本の遊び場にされても、守ってくれる仕組みが無い。
だから星凜主義は制度を作りますの。
女の子たちを“闇”に置いたままにしないために。」

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